連載 Estrogen Series・8
乳癌既往患者にエストロゲンの使用は可能か?
矢沢 珪二郎
1
1ハワイ大学
pp.1194-1195
発行日 1996年9月10日
Published Date 1996/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902669
- 有料閲覧
- 文献概要
更年期後の女性に対してエストロゲンを使用することはオステオポローシスを予防し,虚血性心疾患の発生を遅らせ,血中脂質を改善し,生命の質(quality of life)を改善する。30〜40歳台で乳癌にかかり,化学療法を受けた女性は,少なくともその80%が卵巣機能を停止し,「早すぎた閉経期premature menopause」を迎えることになる.このような患者に対して,エストロゲンを使用することは可能であろうか?
今回取り上げる論文の著者であるカリフォルニア大学(Irvine)のDiSaiaらは,1989年にこの問題に関して,いくつかの「自然の実験」を分析することを提案している.それによれば,エストロゲンの血中濃度が高い状態で,同時に癌細胞が体内にあると推定される場合,(実験的にではなく)自然に発生する,という.たとえば,乳癌と妊娠との併存,経口避妊薬使用中の乳癌発生,それにエストロゲン補充療法中の乳癌,などである.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.