連載 Estrogen Series・33
環境エストロゲンと乳癌
矢沢 珪二郎
1
1ハワイ大学
pp.1536-1537
発行日 1998年12月10日
Published Date 1998/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903490
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さまざまな化学物質による環境の汚染はわれわれの健康を損なっているのだろうか? 癌,先天性疾患,乳児や子供を侵す種々な疾患などの発生は,われわれに解明のための行動を促すものである.この5〜6年は内分泌作用をもつ環境中の化学物質汚染に注目が集まっている.とくに弱いエストロゲン作用を持つ有機塩素化合物(organoch—lorine)であるPCB,DDT,(DDTの代謝分解物である)DDEなどに関心が向けられている.これらの物質は環境中に安定して長期間存在し,その汚染は全世界を覆い,魚,野生動物,ヒトの組織・血液・乳汁などから検出される.これらの環境に広く存在する汚染物質である有機塩素化合物が女性の乳癌発生,男性の精子数減少を始めとする生殖能力の減少,小児の神経学的発達の欠損などの原因となっているのではないか,という疑問にはまだ解答が得られていない.
職業的に高レベルの化学物質にさらされ,その結果,健康が障害されることはいままでに報告されている.しかし,低レベルの環境汚染により特定の健康障害が起こるかどうかの科学的な証明は困難であり,その検証もまた困難である.
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