今月の臨床 婦人科がん治療の難題を解く―最新のエビデンスを考慮した解説
卵巣がん
1.妊孕能温存療法の限界は?
小島 淳美
1
,
田中 達也
1
,
安田 進太郎
1
,
浅原 彩子
1
,
山口 聡
1
,
竹森 正幸
1
,
西村 隆一郎
1
1兵庫県立成人病センター婦人科
pp.1524-1529
発行日 2003年12月10日
Published Date 2003/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101350
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はじめに
最近の卵巣癌に対する手術はより広範かつaggressiveになりつつある.その理由は,術後に追加する化学療法の有効性が手術の完遂度に大きく依存していることが認識されるようになったからである.しかし,このようなaggressive therapyは進行卵巣癌の予後を改善しつつある反面,早期癌でも妊孕能を喪失する若年婦人を増加させてしまうことも事実である.それは挙児を望む婦人にとっては不運なことであり,晩婚化,少産化,分娩年齢の高齢化などもあって深刻な社会問題でもある.
卵巣悪性腫瘍のなかでも若年婦人に好発する胚細胞性腫瘍は,化学療法にきわめて感受性が高いところから,いち早く妊孕能を考慮した機能温存療法が導入され,すでにその臨床的意義はよく認識されている.一方,その多くが更年期以降に発症する表層上皮性卵巣癌(surface epithelial ovarian cancer : EOC)も,最近の発生頻度の増加に伴って若年化傾向が認められ,20歳代や30歳代の患者に遭遇することも稀ではなくなってきた.このような背景から,挙児希望の強い若年婦人に発症したEOCの取り扱いについては再検討の必要性が生まれている.すなわち,早期EOCに対する妊孕能温存手術の適応が将来の挙児を含んだ“quality of life”の面からも検討され,そのリスクとベネフィットを医師と患者の間で話し合う必要がある.本稿では,悪性卵巣腫瘍における妊孕能温存療法についての最近の議論とコンセンサスを概説したい.
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