今月の臨床 婦人科がん治療の難題を解く―最新のエビデンスを考慮した解説
卵巣がん
2.傍大動脈リンパ節郭清の治療効果は?
葛谷 和夫
1
,
中西 透
1
1愛知県がんセンター病院婦人科
pp.1531-1535
発行日 2003年12月10日
Published Date 2003/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101351
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はじめに
卵巣癌において傍大動脈リンパ節には,骨盤内リンパ節と同様に高頻度で転移を認め,卵巣癌の所属リンパ節と考えられている.ほかの癌腫と同様に,卵巣癌の治療においてもこの所属リンパ節の郭清は,腫瘍の蔓延状況を把握し,同時に予後の改善という治療効果を期待して行われてきた.1988年のFIGO(International Federation of Gynecology and Obstetrics)進行期分類に後腹膜リンパ節転移が採用されたが,その後もこれらリンパ節の検索や治療目的の郭清に反対する意見があり1~6),現在のリンパ節郭清に関する議論へと継続してきている7~14).卵巣癌の所属リンパ節に転移がある症例とない症例の予後を比較した報告や1, 3, 4, 6~9, 13),リンパ郭清を施行した群の予後と施行されなかった群の予後を比較した報告は多数あるが4, 6, 7, 10, 14),不思議なことにこれらの結果や結論の間に相違がみられる.なかでも予後に有意な差を認めなかった報告では,その解析結果から骨盤内~傍大動脈リンパ節郭清に治療効果はないと考え,リンパ節郭清・検索の省略を主張する根拠としている.
骨盤内~傍大動脈リンパ節郭清は卵巣癌の予後を改善しないというのは本当だろうか.ここでは,現在までの報告の内容と当院での経験を示し,卵巣癌に対する骨盤内~傍大動脈リンパ節郭清の治療効果の可能性を検討し,最後に卵巣癌治療における骨盤内~傍大動脈リンパ節郭清について考察する.
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