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はじめに
生殖可能年齢の女性の約20%が子宮筋腫を有するという1,2).施設間の患者構成比率に偏りがあるにしても,臨床の現場の印象でもこの数値は妥当のように思われる.さらに,子宮摘出病理標本例3)では無症状子宮筋腫直径5mm以上のものは77%の女性にみられるという.このように高率に無症状子宮筋腫が存在するということは,各臓器に生ずる加齢現象のうちの1つとも考えられる.有症状子宮筋腫には主な3つの臨牀症状が存在する.すなわち,1つには出血にまつわる過多月経,貧血,2つには痛みにまつわる過多月経,下腹部腰部痛,骨盤痛,そして3つ目には骨盤内を占拠する腫大した子宮の容量増加による圧迫症状,頻尿,下腹部膨満感,続発性水腎症などである.子宮動脈塞栓術(以下,UAE)は第一の出血にまつわる諸症状には速効性の高いきわめて有効で確実な治療策である.ところで子宮筋腫の存在自体はsubfertilityであり,決して妊娠は不可能ではないのであるが,筋腫の存在以外は不妊症の諸検査においてほかに異常がない場合は積極的な対応策が必要となる.
有症状子宮筋腫に対する治療方法としてUAEは非常に有効な治療法であるが,2つの問題点が存在する.1つはoverembolizationの問題,すなわち理論上には治療したい目的の筋腫核のみを塞栓する「子宮筋腫塞栓術(uterine fibroid embolization:UFE)」であるが,現実には子宮筋腫のみを随意選択的に塞栓することはできず,子宮筋腫および近傍の動脈を塞栓する「子宮動脈塞栓術(uterine artery embolization:UAE)」であり,標的以外の組織も塞栓し“nontarget tissue enbolization”を引き起こしてしまうのは,程度の差はあるものの不可避であるという問題である.2つ目はUAE後に子宮内に残存する壊死化筋腫核が引き起こすUAE後合併症発生の可能性があるという問題である.
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