今月の臨床 卵巣がん─最新の治療戦略
初回治療
2.妊孕能温存の限界
梶山 広明
1
1名古屋大学医学部産婦人科教室
pp.866-871
発行日 2011年7月10日
Published Date 2011/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102720
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はじめに
一般的に,上皮性卵巣癌の発症ピークは50歳台にあるが,その10%前後は40歳未満の生殖可能年齢に発症する.現実に,日本産科婦人科学会が行っている卵巣悪性腫瘍登録調査では図1に示すように年々,40歳未満の卵巣癌患者数が増加してきている.もちろん,こうした患者すべてに当てはまるわけではないが,近年の未婚・晩婚化傾向に伴い本疾患における妊孕性温存の可否が議論される機会も少なくない.実際,われわれ産婦人科医にとっても日常臨床でこうしたケースに遭遇することは今後,ますます多くなっていくと考えられる.妊孕性温存手術は縮小手術であるため,適応を十分吟味する必要がある.しかしながら,この領域では満足しうるエビデンスが得られていないため,卵巣癌の妊孕性温存に関する臨床病理学的適応やその術式についても各種ガイドラインによって見解が異なっている実情がある.そこで本稿では,I期卵巣癌に対する妊孕能温存手術に関する最近までの知見を概説し,現時点における運用上の課題や今後の方向性などについて述べたい.
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