今月の臨床 —どこまで可能か—悪性腫瘍治療と妊孕能温存
子宮体癌
1.妊孕能温存療法の適応と限界
井上 正樹
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1金沢大学大学院医学系研究科がん医科学専攻機能再生学講座分子移植学
pp.980-983
発行日 2002年8月10日
Published Date 2002/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904702
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はじめに
日本人の子宮体癌は増加が指摘されている.米国では乳癌,肺癌,大腸癌に次いで4番目に多い癌となっている.米国の1999年の統計では35,000人/年(24人:人口10万)が発症し,1年間に約6,000人が死亡している.日本でも1981年には女性10万人に対して4.3人と推定されていたが,最近ではさらに増加は著しいものがある.子宮頸部癌の頻度が著明に減少する中で,体癌の日常診療に占める割合は年々高くなってきている.日本産婦人科学会子宮癌登録の記録によると,子宮体癌は1970年代では子宮癌全体の約10%であったのが1997年では約40%(子宮頸部浸潤癌4,159例,体部癌2,606例)となっている1).
最近では女性の社会進出が定着し,晩婚化が進み,それに伴い妊娠・分娩が高齢化している.したがって,体癌でありながら妊孕能温存を希望する患者も必然的に増えると考えられる.そこで,今後必要度が増すと考えられる体癌患者の妊孕能温存治療,すなわち子宮温存治療は可能なのか?臨床病理学的および最近の分子生物学的手法より得られた知見に基づいて,その治療の実際と注意点を述べたい.
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