今月の臨床 婦人科がん治療の難題を解く―最新のエビデンスを考慮した解説
子宮頸がん
3.放射線化学療法の有用性は?
小林 浩
1
,
平嶋 泰之
2
1浜松医科大学産婦人科
2静岡県立静岡がんセンター婦人科
pp.1488-1493
発行日 2003年12月10日
Published Date 2003/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101343
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
わが国では1981年以降癌が死因の1位を占め続けており,癌撲滅が人類にとっての最大の課題となっている.現在,癌全体の治癒率は50%であり,進行癌では固形腫瘍の治癒率は現在でもわずか10%しかない.癌治療の原則は,手術により可及的切除し残存腫瘍を放射線や抗癌剤で叩くことであるが,最近の集学的治療をもってしても生存率は上昇していない.日本の癌の罹患率は男性36万人,女性24万人で,死亡数が男性17万人,女性11万人となっている.現在,国民の約1/3が癌で死亡しているが,その比率も半数までに増加するといわれており,国民の5人に1人以上が放射線治療を受ける時代が来ると思われる.この背景には,癌治療を科学的に判断するevidence―based medicine(EBM)という手法が普及し,放射線治療が正当に評価されはじめた事情がある.
欧米では,癌患者のおよそ半分が放射線治療を受けている.実際,日本でも放射線治療は増えているが,わが国では1/4程度で,世界でも最も低いといわれている.しかし近年急速に増えており,近い将来,欧米並になると予想される.特に,子宮頸癌は約100年前から放射線治療が行われ,古くから標準的治療法が確立されてきたと考えられている癌種である.しかし,最近まで患者転帰を指標とした無作為比較試験(RCT)や優れたデザインのコホート研究により有効性・妥当性が明確にされていなかった.このような状況にあるので,子宮頸癌の放射線治療におけるEBMを確立する必要性がある.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.