今月の臨床 習慣流産をとめる
病因をめぐるControversy
2.免疫療法の有用性
田中 忠夫
1
,
秋山 芳晃
2
,
山田 恭輔
2
1東京慈恵会医科大学産科婦人科
2国立大蔵病院産婦人科
pp.678-681
発行日 1996年5月10日
Published Date 1996/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902540
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習慣流産の中には,同種移植片としての胎児が免疫学的に拒絶されることによって起こるものがあるとされており,症例夫婦に対して施行される諸検査で異常を認めない,いわゆる原因不明のものを,臨床的には同種免疫の異常による流産と推定してきた.また,移植免疫学的立場からの同種移植片の拒絶反応に関する検討からは,妊娠母体の胎児抗原に対する不応答性,すなわち遮断抗体の欠如などに流産の原因を求める報告が多くなされてきた.そして,そのような症例に対して夫リンパ球などを用いた免疫療法が行われてきており,多くの報告では高い妊娠維持率を得ているが,無治療症例との間にその差がないとするものもあり,少なくとも免疫療法の臨床的有用性に関しては必ずしも意見の一致をみていないのが現状である.
その要因として;①免疫学的妊娠維持機構の全容がいまだ明らかではない.②また,免疫学的な胎児の拒絶が流産の原因であると確定し得る症例を抽出する方法が確立されておらず,現行の除外診断に頼るしかない.③したがって,臨床的治療効果を評価するcontrolled trialの条件設定が難しく,十分になされていない,などが挙げられる.
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