今月の臨床 PCOS─新たな視点
PCOSに関連した新しい分子,遺伝子
3.遺伝子異常
池田 禎智
1
,
中村 和人
1
,
峯岸 敬
1
1群馬大学大学院医学系研究科生殖再生分化学(産科婦人科学教室)
pp.1210-1213
発行日 2006年9月10日
Published Date 2006/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101281
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はじめに
多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)は性成熟期の女性において比較的高頻度に認められる内分泌疾患であり,種々の代謝異常との関連性も知られている.その発症は複数の遺伝的要因と環境的要因によるとされているが,いまだ明らかになっていない.遺伝的要因としてアンドロゲンをはじめとするステロイドの合成や糖代謝,卵胞発育などにかかわる遺伝子について種々の報告がなされているが,現在のところ一致した見解は得られていない.その理由として,(1)PCOSはその臨床症状として排卵障害に伴う不妊症を呈するため疾患を持つ家系の存続が難しく,遺伝的解析に限界があること,(2)PCOSの臨床像が一様ではなく解析の対象となる集団の設定が困難であり,それぞれの施設が独自の基準で症例を収集し解析していること,(3)表現型が女性にしか現れず,男性におけるそれは不明であること,(4)調査対象に人種や民族間の差があることなどが挙げられる.このような現状を鑑みたうえで,本稿ではいままでに報告されたPCOSのさまざまな遺伝的要因について主に概説したい.
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