臨床外科トピックス がん遺伝子の基礎と臨床・4
遺伝子異常と肝臓癌
上田 政和
1
,
守瀬 善一
1
,
西脇 真
1
,
都築 俊治
1
1慶應義塾大学医学部外科
pp.913-916
発行日 1993年7月20日
Published Date 1993/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407901203
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はじめに
分子生物学をはじめとした基礎研究の進歩により,癌の発生・進展には多くの遺伝子が関連し,癌は本質的に遺伝子異常の結果生じることが明らかになってきた.これらの事実から,ヒト癌においても,その生物学的特性と異常が生じている遺伝子とのあいだには一定の関連があると予想することは当然の帰結であると考えられる.このような考え方に基づいて,われわれは1984年から食道癌,胃癌,大腸癌,肺癌,乳癌,肝細胞癌の臨床腫瘍学的特性と癌遺伝子異常との関連を追求してきた.その結果,癌遺伝子異常がある種のヒト癌の臨床腫瘍学的特性を表現するのにきわめて有用なマーカーであることが明らかにされてきた1,2,3).「臨床外科」にこのようなシリーズが組まれるようなことになったのも,以上のような流れと無縁なものではないと考えている.
本シリーズの他の項目では,その表題は癌遺伝子と各種癌組織ということになっているが,本稿では他の論文と異なって,その表題を癌遺伝子ではなく,単なる遺伝子とした.その理由は,肝細胞癌では他臓器癌とはまったく異なって,その発生・進展において,ヒトに本来存在する癌抑制遺伝子や癌遺伝子のみでなく,ウイルス遺伝子であるB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスがきわめて重要な意味を有しているからである.
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