連載 産婦人科エコー 何を考えるか?・8
胎児腹部の嚢胞性腫瘤像─腎の嚢胞化
竹内 久彌
1
1愛和病院画像診断部
pp.1145-1147
発行日 2006年9月10日
Published Date 2006/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101268
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妊娠20週の妊娠中期超音波スクリーニングで,胎児腹部の腎レベルの横断面にいくつもの嚢胞像がみられたとして,直ちに精検を求められた症例である.
嚢胞が描出された腹部横断面,すなわち両側腎が描出されるはずの断面をここに示した.脊柱(1)の左側,通常なら左腎の横断面が描出されるべきところに大小いくつかの嚢胞を含む腫瘤像(矢印)がみられる.腫瘤自体の被膜構造は明らかでなく,腹膜も描出されていない.さらに,腎であれば認められるべき腎盂・腎杯の形態や腎実質を同定できず,この腫瘤が腎を発生源としたものであるか否かを特定する材料に乏しい.しかし,位置的に腎を考えて矛盾がなく,腎の形態をほかに描出できないことから,この嚢胞性腫瘤を腎としてよいものと考えた.このような腎自体の嚢胞化が起こる病態として最初に考えるのは多嚢胞性異形成腎(multicystic dysplastic kidney : MCDK)である1).
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