今月の臨床 妊娠と免疫
病態にかかわる免疫異常
2.早産と局所免疫
大槻 克文
1
,
長谷川 明俊
1
,
佐々木 康
1
,
岡井 崇
1
1昭和大学医学部産婦人科学教室
pp.1053-1057
発行日 2003年8月10日
Published Date 2003/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100857
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はじめに
日本における近年の周産期医療の進歩は目覚しく,2001年の統計では,周産期死亡率(5.5,出産1,000対)は世界一低く,母体死亡率も世界のトップ水準となっている.しかし,このような進歩がみられるなかで,現在,新生児死亡および生後の後遺症の原因の過半数を占めるのが早産,特に早期の早産である.早産の原因については最近の研究からその一部として絨毛膜羊膜炎との関係が明らかになってきたが,絨毛膜羊膜炎や早産に対する臨床現場での予防対策は未だ十分には確立されておらず,2001年の早産率は種々の要因があるにせよ5.3%と上昇傾向さえ示しており,早産率の低下をみるには至っていない1).早産の防止が今日の周産期学の中で最も早期に重点的に解決すべき課題のひとつであることは明らかである.そのためには,早産の発生機序を知り理解する必要がある.そのうえで最適な治療法を見出すには,局所で発生している現象をさらに詳しく分析する必要がある.
本稿では,早産の主原因と考えられている絨毛膜羊膜炎による早期陣痛の発来および頸管の熟化機構について免疫の観点を中心に概説する.
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