今月の臨床 妊娠中毒症─新しい名称と定義
中毒症の臨床
2.生活・栄養管理と検査計画
星合 哲郎
1
,
木村 芳孝
1
,
岡村 州博
1
1東北大学病院産婦人科
pp.1026-1029
発行日 2004年8月10日
Published Date 2004/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100581
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はじめに
妊娠中毒症の栄養管理は古くて新しい問題の1つである.過去に低カロリー,減塩,高蛋白質を中心としたさまざまな栄養管理が試みられた.これらの経験を基に1981年にまとめられた妊娠中毒症栄養管理指針は妊娠中毒症の食事療法の指針と考えられ,その後約17年間ガイドラインとして使用されてきた.この栄養管理指標と妊婦健診の制度により,1980年に妊産婦死亡の第1位であった妊娠中毒症を含む高血圧が1994年には第3位まで改善した理由の1つと考えられる.この改善は妊娠中毒症に対する栄養管理,生活指導の重要性を示している.しかし,この妊産婦死亡の減少の内訳をみると,重症妊娠中毒症の改善がみられず,これが依然第3位と他の死因に対して高率である原因と考えられる.また,妊娠に対する中毒症性物質の産生が原因で高血圧や蛋白尿,浮腫などを生ずる生活習慣病類似疾患と考えられていた妊娠中毒症の病態が,胎盤虚血を原因とした母体末梢血管のシステマチックな機能障害が織り成すさまざまな症状,すなわち末梢血管抵抗増大による高血圧と,腎尿細管の障害蛋白尿,血管透過性亢進による浮腫を示す病態へと大きくパラダイムがシフトしたことにより,それまで信じられていた上記の栄養管理に関し,この栄養管理が逆に妊娠中毒症を悪化させる場合があることが指摘され,栄養管理の見直しの必要性が指摘されている.ここでは,1998年に出された妊娠中毒症患者の生活指導および栄養管理指導のガイドラインを踏まえ,妊娠中毒症の栄養管理の最近の考え方をカロリー摂取,塩分摂取,蛋白質,水分摂取,脂質に分け考察を加え検討したい.
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