今月の臨床 妊娠中毒症─新しい名称と定義
中毒症の臨床
3.薬物療法の実際
江口 勝人
1
1岡山中央病院産婦人科周産期センター
pp.1030-1033
発行日 2004年8月10日
Published Date 2004/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100582
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はじめに
わが国の妊娠中毒症は画期的な変革の時期を迎えている.現在使用されている妊娠中毒症の定義・分類は,昭和59年に日本産科婦人科学会の妊娠中毒症問題委員会(鈴木雅洲委員長)によって作成されたものが基本となって,その後,平成9年日産婦周産期委員会(神保利春委員長)で一部改変されたものである.
しかし,ISSHPをはじめ諸外国においてその定義・分類が見直されていることから,整合性をはかるためにも,わが国の妊娠中毒症も大幅な再検討が迫られていた.本特集でも解説されると思われるが,日本妊娠中毒症学会(佐藤和雄理事長)では検討委員会を設置して,約2年間をかけて新しい試案を提言し,日産婦学会雑誌に公表されている.これによれば,定義から浮腫を除き,妊娠中毒症の本態を高血圧(+蛋白尿)とするが,蛋白尿のみは妊娠中毒症に含めない.
新しい病型分類はつぎのとおりである.
・妊娠高血圧腎症(preeclampsia)
・妊娠高血圧(gestational hypertension)
・加重型妊娠高血圧腎症(superimposed preeclampsia)
・子癇(eclampsia)
さらに,分類のみでなく従来の妊娠中毒症なる名称も妊娠高血圧症候群(pregnancy induced hypertension : PIH)と改変することを提言している.これによって,わが国の若い研究者が諸外国の学者と同じ土俵で議論することが可能となることを期待したい.ただ,妊娠高血圧症候群なる名称はまだ提言の段階で,承認されていないので,本稿では妊娠中毒症と記載することをお断りしておく.
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