今月の主題 糖尿病診療の現況
合併症の治療と患者指導
計画妊娠と妊婦の管理
大森 安恵
1
1東京女子医科大学・糖尿病センター
pp.68-69
発行日 1987年1月10日
Published Date 1987/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220768
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約5年位前までは,妊娠中糖尿病昏睡に陥り死産に終わったという既往歴をもつ糖尿病者が多かったように思う.最近は,妊娠半ばまで糖尿病の治療が放置され,糖尿病前昏睡の状態で転送されてくる症例にしばしば遭遇する.一般にわが国における糖尿病と妊娠に対する関心と対策は,まだかなり低い印象をうける.Joslin Clinicからの1つの論文によると1),1928年から1938年の間に,20歳以下で糖尿病と診断され生存していた男女症例をしらべてみると,289名中89%が結婚し,多くの症例で子どもをもっている.これは,インスリンが発見されて間もない時代に,糖尿病があっても結婚や妊娠はごく普通に行われていることの証左である.
またごく最近のアメリカでは,糖尿病性腎症のために,腎移植をうけた後,妊娠し出産した症例がすでに9例も報告されている2).糖尿病があると妊娠は難しいというのはすでにはるか過去の時代であり,現在は計画妊娠の時代であるといえる.
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