連載 もうひとつの国境なき医師団・11
骨盤腹膜炎から覗いた救急医療
東梅 久子
pp.916-917
発行日 2005年6月10日
Published Date 2005/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100358
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リハビリテーションセンターでの腹痛
ある日,性産業従事者を対象としたリハビリテーションセンター内の移動診療所に,腹痛を訴える27歳の女性が訪れた.診察すると,左付属器に鵞卵大の有痛性の腫瘤を触知する.左卵巣嚢腫の診断で,専門医の受診を必要とする手紙を,施設長に宛てて書いた.腹痛を理由に逃亡することを恐れる施設の職員は,性産業従事者の訴えを聞き入れないことが多い.
翌日,施設に電話をすると,彼女はいなかった.夜に腹痛が強くなり,職員が病院につれて行った.診察した医師は手術をすすめたものの,彼女が拒否したので帰宅させたという.施設は彼女に手を余し,責任逃れのために,退所させたとしか思えないような対応ぶりだった.
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