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はじめに
腹腔鏡下子宮全摘術は,腹腔鏡下に子宮上部の靱帯(円靱帯,卵巣固有靱帯),卵管と卵巣動静脈の切断,膀胱子宮窩腹膜の切開と剥離に加えて,癒着剥離,子宮内膜症の切除,卵巣(付属器)切除などの操作を行ったのち腟式子宮全摘を行うLAVH(laparoscopic assisted vaginal hysterectomy)と,腹腔鏡下に広間膜,子宮動脈の処理も行うLH(laparoscopic hysterectomy),子宮の回収以外のすべての操作を腹腔鏡下に行うTLH(total laparoscopic hysterectomy)に分類される1).LAVHを安全に行う条件は,いかに安全に腟式操作が行えるところまで腹腔鏡下に処理できるかであり,一方,LHやTLHを安全に行うには,いかに安全に腹腔鏡下操作を行えるかにかかっている.
腹腔鏡下子宮全摘術に際しての合併症は,腹腔鏡下手術すべてに共通するトロカー挿入時の血管損傷や内臓損傷などと,腹腔鏡下子宮全摘術に多く合併する尿管損傷,膀胱損傷や腸管損傷などがある.American Association of Gynecologic Laparoscopists(AAGL)により行われたLAVHに関する調査2)では,2000年1~12月までに9,754例のLAVHが行われ,合併症の発生率は7%(645/9,574例)であった(表1).トロカー挿入時の合併症は80例(8/1,000)報告され,このうち88%は下腹壁血管の損傷である.また,トロカー挿入部位のヘルニアは22例(2.3/1,000)に報告されている.尿管損傷は20例(2.5/1,000)の報告があり,このうち11例はバイポーラによるものである.また膀胱損傷は105例(10/1,000),腸管損傷は25例(2.6/1,000)あった.
重篤な他臓器損傷と,出血を回避し安全な腹腔鏡下子宮全摘術を行う際の要点は,手術の適応に関する要点と手技に関する要点に大別される.そこで,適応と手技の観点から安全な腹腔鏡下子宮全摘術を行う際のポイントを解説する.なお,本稿では便宜上,腹腔鏡下子宮全摘術とした場合はLAVH,LH,TLHのすべてを指すものとする.
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