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はじめに
多嚢胞性卵巣症候群(polycyctic ovary syndrome : PCOS)症例は,ゴナドトロピンレベル(FSH+LH)がほぼ正常範囲を示すWHOのGroup 2 排卵障害のなかで,最も頻度が高い病態とされる.事実,不妊外来,内分泌外来診療において,無月経・無排卵や不妊症を主訴として来院する症例としてしばしば遭遇する.ただし,その診断基準は報告により異なり,諸外国から報告されているPCOS症例群がいずれも同等であるとはいい難い.したがって,何を述べるにしてもPCOSの定義の問題が生じ得るが,ここでは日本産科婦人科学会生殖内分泌委員会の定義1)に基づいて述べることにする.またPCOSの病態も,これまでの各種検討から1つではない可能性が高く,今後,症候群としてのPCOSが次第に解体され分節化されていく必要性をわれわれは認識せねばならない.
さて,PCOSにおける排卵誘発法として,そのリスクとベネフィットの観点から,クロミフェンが第一選択とされる.なぜならば,何よりもまず,排卵誘発に伴う卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome : OHSS)および多胎妊娠発生のリスクを最小とする必要性があるからである.しかし,クロミフェン周期(あるいは副腎皮質ステロイドホルモンの併用,メトフォルミンの併用などを含め)における,排卵誘発成功率,さらに妊娠率は満足できるものでない.そこで,クロミフェン抵抗性を示す症例については,現実的には依然としてゴナドトロピン療法が標準療法とされている.
本稿では,われわれが行ったPCOSに対するゴナドトロピン初期投与量に注目した報告2)の際に用いたデータを再度検討し,PCOS症例に対するゴナドトロピンによる排卵誘発における留意点,今後の展望などを改めて整理することを試みる.
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