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はじめに
子宮内膜症は月経痛や性交痛などの疼痛および妊孕性低下を惹起し,生殖年齢女性のQOLに大きく影響する.日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会が行った検討では,月経痛は活動性の高い子宮内膜症病巣がダグラス窩(直腸腟中隔)あるいは骨盤深部に浸潤したような場合に特に強くなると推論されている1).
子宮内膜症性疼痛に対して表1に示すような治療法が考えられる.この表のなかで,・鎮痛剤は一般に対症療法としてよく使用されている.・~・に示す薬物療法はいずれも子宮内膜症性疼痛に対して有効であることが文献的に知られている2~5).しかしながら,これらの有効性はいずれも一過性であり,治療終了後には高頻度で症状再発が起こる.・の手術療法であるが,これに関するrandomized controlled trial(RCT)研究論文が1編存在し6),このなかでレーザーを用いた腹腔鏡下子宮内膜症手術の有効性が明らかとなっている.この論文の続編として術後のフォローアップ成績が報告されている7).術後1年時における症状再発率もレーザー手術群で低く,腹腔鏡下手術は子宮内膜症性疼痛の治療において重要な選択肢の1つであることが示されている.
われわれも子宮内膜症性疼痛に対する腹腔鏡下子宮内膜症手術の有用性に関する検討を行った8).これは骨盤深部にまで浸潤した子宮内膜症に対してKTP─レーザー焼灼術を施行し表在性部分を焼灼・蒸散した群(焼灼群)と深部病巣を切除・摘出した群(切除群)とにおける術後の疼痛再発について検討したものである.RCTの成績ではないため確定的なことはいえないのかも知れないが,切除群では焼灼群に比較して症状再発が起こりにくいことが示されている(図1).骨盤深部にまで浸潤した子宮内膜症に対してKTP─レーザー焼灼だけで手術を終了した場合,表在性部分は確かに変性・蒸散されているのではあるが,深在性部分には生きた子宮内膜症が残ってしまい,そのために高い確率で症状再発が起こったことが推察できる.他方,子宮内膜症病巣を完全に摘出するとその疼痛除去効果が長期間にわたって持続する.
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