今月の臨床 子宮内膜症の新しい治療戦略
痛みへの対策
痛みに対する薬物療法
伊藤 博之
1
1聖路加国際病院女性総合診療科
pp.169-173
発行日 2006年2月10日
Published Date 2006/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100030
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はじめに
子宮内膜症は疼痛と不妊を主訴とする疾患で生殖年齢にある女性の5~10%にみられ,しかも月経痛を訴える女性の40~60%に子宮内膜症が認められている.
子宮内膜症の疼痛は多くの女性の日常生活のQOLを低下させ,今日ではその経済的影響も大きいと思われる.疼痛としては月経痛が最も多く日本内膜症協会の調査でも88%にみられ,ついで月経時以外の下腹痛,腰痛,性交痛,排便痛などの頻度が高い.このような疼痛の発生機序としてはプロスタグランジン(PGs)の産生増加のほか腹腔内病変部の炎症,出血,癒着,圧迫などさまざまな要因が考えられている.
子宮内膜症の疼痛に対する薬物療法には月経痛などに対しNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)をはじめとする鎮痛薬を投与する対症療法と,子宮内膜病変の改善や手術の術前・術後治療を目的としてGnRHアナログ,ダナゾール,経口避妊薬(ピル)などを投与するホルモン療法とがある.どのような症例にどの薬剤を選択するかは患者の年齢,病状の程度,挙児希望の有無などを参考のうえ決定する.しかし,子宮内膜症は薬物療法のみで根治させられないこと,薬剤の有効性には個人差があること,副作用があること,再発率が高いことなどを事前に十分に説明し,了解のうえ治療を開始することが肝要である.
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