視座
膝蓋骨への雑想
青池 勇雄
1
1東京医科歯科大学整形外科
pp.1063
発行日 1975年12月25日
Published Date 1975/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408908529
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Nail-patellar syndromeは1957年Bailerの命名によるものであるが,それまでは先天性膝蓋骨欠損のなかに一括して報告されていた.私も祖父,父,息子の三代にわたる家系調査をしたことがある.昭和16年冬のことで,東北の田舎へ川島,河邨両先生と出掛け,そこで肘,膝,爪などに全く三名とも同じsyndromeを示しているのに驚いた.残念ながらその時の資料が一部紛失して,未だに報告できなくなつたことを両教授にお詫びしなければならない.その当時一体何んという病気かその診断に苦労したものである.Syndromeの名前がつく16年前のことであつた.これらの患者の膝蓋骨はほとんど触れない程に小さいものであつたが,歩行,疾走など膝の機能には全く障害はなかつた.
膝蓋骨は四頭筋腱が大腿骨顆間の溝の中を円滑に滑動して,膝伸展筋力の能率を高めるためと膝の前面からの衝撃から関節を守るためにあるが,膝蓋骨が無くても大した障害はないようである.
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