境界領域
疾病における心理・社会的要因に関する考察—特に鞭打ち損傷を中心として
田中 恒男
1
,
大橋 正幸
1
,
竹広 舜
2
,
林 浩一郎
2
Tsuneo TANAKA
1
1東京大学医学部保健管理学教室
2東京大学医学部整形外科学教室
pp.324-331
発行日 1968年4月25日
Published Date 1968/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408908455
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はじめに
医学的諸問題を認識する立場には,二通りの様式がある.すなわち,生物学的基盤にもとづいて,主としてその生理的,病理的現象として認識する立場であり,一方は,その現象の社会的相互作用を中心に認識する立場である.この立脚点は,疾病の認識においても異なるものではなく,医療の対象としての患者と,医学の対象としての病理実体との二面性を有することは,いまさら論をまたない.実際の診療の場で,しばしば起る誤解は,この二面のすりかえであって,同一のものを見ているという事実に変りはなくても,その認識の立場をすりかえることは,きわめて大きな危険を伴う.
とくに極端な生物学的主義に立つ見方は,病人を社会的存在として見ずに,単なる一個の生命担体としての認識に陥り易く,症候が病理構造と直結するかのごとく考える弊害すら生じる.
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