Japanese
English
研究と報告
いわゆる鞭打ち損傷慢性患者に特有な心理・社会的状況
The Specific Psycho-social Situation of the Chronic "Whiplash Injured" Patient
小此木 啓吾
1
,
鈴木 敏生
1
,
塚田 浩二
1
,
木村 聰
1
,
深津 千賀子
1
,
佐伯 喜和子
1
Keigo Okonogi
1
,
Toshio Suzuki
1
,
Koji Tsukada
1
,
Satoru Kimura
1
,
Chikako Fukatsu
1
,
Kiwako Saeki
1
1慶応義塾大学医学部精神神経科教室
1Dept. of Neuro-psychiat., Keio Univ. School of Med.
pp.867-878
発行日 1969年11月15日
Published Date 1969/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201533
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Ⅰ.まえがき
いわゆる鞭打ち損傷1)(whiplash injury)は,1928年,米国のCrowe2)によつて紹介されて以来,脊柱とくに頸椎に加えられる特有な受傷機転による種々の損傷に対する一種の医学的俗称としてもちいられており,共通した受傷機転による種々の器質的損傷を包括する概念である。
しかるに,最近の自動車事故,とくに追突事故の急増に伴いこの受傷機転による損傷注1)が注目をあびるようになり,しかも個々の器質的損傷の性質や程度の違いを無視して,そのおそろしさや悲惨さがマスコミによつて喧伝されるようになつた。また一方では,その一部の患者にみられる器質的所見と不相応な神経症様の訴えや社会不適応状況が注目されるようになつた。その結果,椎間板あるいはその支持軟部組織の捻挫,挫傷を主とし,治療によつて3カ月以内には,その損傷が治癒すると考えられるのに,その経過が慢性難治で,整形外科,脳外科の立場からみて器質的な所見と不相応の訴えが固執される患者群が,われわれ精神科医の対象となる機会が多くなつてきた。
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