Japanese
English
外科の焦点
病識の形成と医療阻害—特に鞭打ち損傷の医療情況をめぐつて
Development of disease consciousness and hindrance to medical treatment :especially on the treatment of whiplash injury
林 浩一郎
1
,
竹広 舜
1
Kôichirô HAYASHI
1
1東京大学医学部整形外科
pp.985-990
発行日 1968年6月20日
Published Date 1968/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407204624
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はじめに
現在の医療情況が社会的要請に応えているとはもちろんいえない.しかし同時に医師にとつてもなおしにくい患者がふえてきたのは事実である.医療は,単なる技術でなく医師患者関係のヒューマンリレーションにのつかつたものだけに医師側の人格,見識,技量のみならず患者の個性,心理状態からさらに社会的情況,制度,葛藤などが直接間接に医療の場に光をあるいは影を投げかける.とくに最近問題になつている鞭打ち損傷は,交通災害という社会問題の密にからまつた疾患であり,まさに現代の医療の困難さを一身に脊負った代表的存在とも言える.われわれはここで鞭打ち損傷の医療情況を検討し治療の困難性にっいていささかの検討を試みた.最初におことわりしておくが,著者は決して鞭打ち損傷の器質的障害を軽視しているのではない.唯本論文では見方をかえて別の立場に立つたのであり,これは同時にわれわれ自身の反省でもある.はじめ自覚症状から愁訴をへて病識の形成について述べ,その後医療阻害という面からさらにくわしく考察をすすめたいと思う.
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