シンポジウム 骨肉腫の診断と治療のトピックス
緒言/骨肉腫医学の明日へ向けて
富田 勝郎
1
1金沢大学医学部整形外科
pp.4-5
発行日 1997年1月25日
Published Date 1997/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408908301
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骨肉腫は長年,数多い骨腫瘍の中の王者としてその地位を確保し,他の多くの骨腫瘍の「診断と治療」の指針となるべく,最先端を走ってきた.私自身もこの領域に引きずり込まれてから20年余りの間,骨肉腫と闘う整形外科腫瘍医の姿を見続け,いつの間にかその渦に巻き込まれながら骨肉腫の制圧を夢見てきた.しかし知恵のあらん限りを尽くしても全く何事もなかったかのように平然と頭を持ち上げてくる再発・転移の執拗さに,これまで何度打ちのめされ,虚無感にとらわれ,投げ出し,また気を取り直してきたことであろう.骨肉腫は歯が立たないしろものではない.いずれの手段にもそれなりに反応をみせてくれる.が,その限りなく執拗なしたたかさに恐れをなしてしまう「ばけもの」なのである.
診断するや即切断するのがスタンダードであった20年余前(1976年),留学先のバッファローでのProf. Sutow WWの講演で,当時の白血病治療の500倍の抗癌剤を用いるという,気違いじみていて信じられないような「high-dose methotrexate化学療法」で,骨肉腫の肺転移が消えてしまったという症例を見せられたときの鳥肌立った思いも,今では私一人の懐かしい思い出となってしまった.今や抗癌剤の有効性を疑問視するものはいない.
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