シンポジウム オステオポローシスの評価と治療方針
緒言
越智 隆弘
1
1大阪大学医学部整形外科
pp.248-250
発行日 1999年3月25日
Published Date 1999/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408902652
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骨粗鬆症は高齢社会の到来とともに重要視され始めた病態の代表格です.決して新しい概念ではなく,加齢とともに当然発症する周知の病態と考えられてきました.例えば,「70歳を超えた高齢者が自宅の布団の上で尻餅をついて立てなくなった」と聞けば,整形外科医は「骨粗鬆症の高齢者に大腿骨頚部骨折,または腰椎圧迫骨折が起きたのだろう」と即座に言うほど,臨床現場第一線の整形外科医にとって高齢者の自然経過として発生する通常の病態でした.加齢とともにあらゆる臓器の構成細胞は退行性変化を起こしていきます.女性生殖器系の退行性変化からエストロゲン減少による閉経後骨粗鬆症が発生します.さらに加齢が進むと全身臓器の退行性変化が起きて,種々の機能低下が進み,老人性骨粗鬆症に陥っていきます.その病態の中で骨代謝の一面だけをみると,腸管や腎細尿管の機能低下によるCa再吸収の減少,骨芽細胞そのものの機能低下等々により,骨形成能は低下して骨梁は菲薄化してオステオペニア(骨減少症),さらにオステオポローシス(骨粗鬆症)に陥っていきます.私ども整形外科医は骨粗鬆症を加齢による自然経過と捉えながらも,例えばカルシウム摂取不足や廃用(動かさないこと)などによる二次性骨粗鬆症を防ぐために,食事内容の注意を与えたり,少しでも身体を動かすように日常生活上の注意を与えてきました.そして,骨折を起こせば治療にあたるというのが整形外科医の診療姿勢であったと思います.
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