声
先天性四肢障害対策
杉浦 保夫
1
Yasuo SUGIURA
1
1名古屋大学医学部整形外科学教室
pp.1155
発行日 1976年12月25日
Published Date 1976/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905452
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あの痛ましいサリドマイド被害児問題は,長い苦しい裁判闘争の末,やつと国も製薬会社も「サリドマイド奇形はサリドマイド剤服用によるものである」との因果関係を認め,被告と原告団との間に和解が成立して一応の解決をみたが,サリドマイド胎芽症以外の四肢障害児については何らの因果関係の究明も,その実態調査さえも,充分には行なわれていないのが実情である.
先頃厚生省によつて行なわれた,裁判に加わらなかつたサリドマイド被害児の補償と救済を目的とする「サリドマイド被害児認定調査」の結果,新たに190名の子供がサリドマイド被害児と認定されたものの,類似の症状を持つた162名の子供たちは認定から外された.「サリドマイド剤が原因の先天異常ではない」という理由だけで,救済の対象から外されたわけで,この162名という数字は先天性四肢障害児のほんの氷山の一角に過ぎず,四肢障害児の数はその数百倍,いや数千倍に及ぶものと考えられる.
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