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いとぐち
先天股脱の治療が新生児期あるいは乳児期に移行したことにより,治療成績の著しい向上がえられているが,観血的整復術を必要とする症例は,なお皆無とはいえない.従来の古典的治療法が行なわれていた時代に比して観血的整復術を必要とする症例は低年齢となり,1歳以下で手術を余儀なくされる場合が増加している.Salzerらは1967年乳児期の観血的整復術として,股関節内側侵入路を用いたLudloff法が適当であることを再確認し,Lange, M.(1968),Karpf, M.ら(1973)により主としてオーストリア,ドイツで普及しMau, H.(1971),Ferguson(1973)によつて北米にも紹介され追試が行なわれ,経験が積まれている.Leveuf, SommervilleさらにScagliettiらによつて推賞されてきた前方あるいは側方径路による観血的整復術は,対象が幼児(一般に2,3歳以降)であり軟部組織の整復障害の除去を目的として行なわれてきた.すなわち内反した関節唇,関節囊と骨頭あるいは腸骨との癒着,骨頭円靱帯の肥厚および延長,臼底脂肪組織の肥大,腸腰筋腱による関節囊の狭窄などを関節造影で予想し,これらの障害因子を除去することを目的としているが,Ludloff法では乳児期における主要な整復障害因子である股関節前面に緊張した関節囊を切開し関節腔の拡大を計ることを目的としており,原則として骨頭円靱帯や関節唇の切除は行なわない(ventrale Kapselspaltung).事実関節嚢の切開のみで骨頭の整復位保持が改善され,関節唇に対する操作は多くの場合不要である.
われおれは,昭和39年以降,観血的整復術を必要とする症例の年齢が低下するに従い,前方径路による関節唇切除術に代つてLudloff法を採用してきた.本法の術式が容易であることは疑う余地がないが,術後成績に関する撮告が少なく関節唇切除術に対する得失も考慮されなけれぽならない,とりわけ1次的な観血的整復術が先天股脱の治療体系において妥当であるか否かは疑問であり,さらに関節囊切開術は観血的な先天股脱治療の第1歩を占めるにすぎないものであるかどうかという点についても明らかにする必要がある.
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