特別寄稿
先天股脱にならないよう予防が大切
石田 勝正
1
1京都大学整形外科
pp.84-89
発行日 1975年2月10日
Published Date 1975/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205566
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はじめに
我が国は先天股脱多発国である。この疾患のために患者の受ける苦痛とハンディキャップは,成人してからもあるいは老後にまでも及び一つの社会問題である。しかもこの発見や治療のために多大な労力と莫大な費用がついやされてきたことは,保健婦や整形外科医が日々体験し,悩まされてきたところである。
先天股脱はその名が示すように,はたして先天性であろうか。先天性と名づけられているために,生下時すでに脱臼という状態になってしまっていて,あとは整形外科医が治療するものと考えられているのが現状である。しかしこの考えは誤っている。脱臼という状態が成立するのは多くは生後1〜2か月と思われ,生下時直後からこの時期までの後天的な環境が,脱臼の成立に大きく影響するからである。生後環境因子の中で最も重要なのは,肢位である。自然な肢位をそのままにしておく取り扱い方をすれば,多くは自然治癒したり,新たに悪化するのを防ぐが,逆にいきなり伸展位に強制すると自然治癒が起こらないばかりか,新たに悪化させることもある。この自然な肢位とは,屈曲した開排肢位であり,安眠時に裸にすれば容易に観察される。これはまさに四足動物と同じ肢位であり,かつ治療の肢位でもある。自然が治療してくれるといってもよかろう。
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