論述
遺残亜脱臼および再脱臼について
上野 良三
1
,
原田 稔
1
,
倉 一彦
1
,
玉井 昭
1
Ryozo UENO
1
1奈良県立医科大学整形外科学教室
pp.380-388
発行日 1976年5月25日
Published Date 1976/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905343
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いとぐち
先天股脱の予後を不良にする因子には,臼蓋形成不全,大腿骨頭ならびに頸部の変形および関節内外における軟部組織性の障害が考えられる.大腿骨頭に発生する変化はPavlik-BandageあるいはFlexionsbandage(Hoffmann-Daimler, Fettweis)などの機能的治療法や観血的整復術による整復障害因子の除去により発生頻度が減少したが,臼蓋形成不全や頸部の変形で代表される遺残性変化は,現在にいたるまでなお完全な解決がえられていない.強度の前捻や外反股の発生は開排位における整復位保持によるという考えからLorenz肢位の固定を避ける試みがなされているが,一般にはなお2〜4歳で頸部の変形を手術によつて矯正し,術後の臼蓋形成を期待するという転子間骨切り術が,Bernbeckらによつて提唱され,以来25年が経過している.その後,減捻内反骨切り術(DVO)の遠隔成績の調査から術後の臼蓋発育には限度があり,すべての症例で良好な臼蓋発育が期待されないことが明らかにされ(Schneider,Jaster,Klein,Weickertら),とりわけTönnisは1969年,165関節の減捻内反骨切り術の成績の統計的処理を行ない,一定以上の臼蓋形成不全を有するものには術後良好な臼蓋発育が期待されないことを明らかにし,臼蓋角の境界値を3歳では25°,4歳では24°とした.
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