講座
先天股脱の早期発見
伊丹 康人
1
1慈恵会医科大学整形外科
pp.52-54
発行日 1958年4月10日
Published Date 1958/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201621
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医聖と云われるヒポクラテスは紀元前500年前既に先天股脱について相当詳しい記載をしております.そして早期の治療で治癒させる事が出来ると考えていた様であります.しかし現今行われている整形外科的治療が本格的に行われる様になつたのは19世紀の末期,ローレンツが非観血的整復法の基礎を確立してからであります.其後半世紀の歴史を以てこのローレンツ法も早期発見の発達と共に次第に変遷し,現在では早期に発見されればされる程,ボスワースの副子やレ線フイルム或はスダレ固定等の様な簡単な方法で相当の治癒率を収める事が出来る様になりました.それだけに早期発見の重要性が強く要望されると同時に,保健所で行われる乳児検診などと共に保健婦さん方のこの方面に対する努力が高く評価されるに至つている事は今更申すまでもない事であります.
併し先天股脱の早期発見と云う事は決して容易な事ではありません,と申しますのは生後出来るだけ早く先天股脱の診断を下す事は是非共必要な事なのですが,生後の期間が早ければ早い程レ線写真でも,又其の他の諸検査においても診断根拠となる確実な所見が得られないからであります.
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