視座
組織血行への関心
田島 達也
1
1新潟大学整形外科
pp.553
発行日 1975年7月25日
Published Date 1975/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905205
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整形外科は四肢のあらゆる組織を取扱うが血管系のみは従来例外と考えられてきたようである.一方四肢主要血管の損傷や閉塞例でも側副血行が保たれていれば遠位部の壊死は大抵回避できる.たとえば前腕で橈骨・尺骨両動脈が断裂しても前骨間動脈が温存されていれば手は救われることが多い.このような状態で一応満足していたばかりか,生体には充分な安全係数が備わつているので少々の血行障害では実際上の不都合を生じないものだ-という楽観論さえ聞かれていた.しかしこれは今からみると我々が組織血行を確実に改善する手段を持つていなかつたために生れた安易な自慰論にすぎなかつたといえる.むろんこれまでも組織血行に注目した研究はあつたが,その障害を証明したとしてもそれをやむを得ない事態と受止めるのみで切実感に乏しかつた.
最近microvascular surgeryの発達普及により積極的血行改善法がある程度確立され,一方以前血行に乏しい組織と考えられていた腱が実はsegmentalに密な血行供給を受けておりその良否が機能状態や断裂時の縫合成績を左右することが明らかになるにつれ組織血行に対して新たな,切実な関心が向けられるようになつた.
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