論述
人工骨頭置換術後の追跡調査
柏木 大治
1
,
高原 伸雄
1
,
原田 寛
1
,
大森 明夫
1
,
桜井 修
2
Daiji KASHIWAGI
1
1神戸大学医学部整形外科学教室
2北兵庫整形外科センター
pp.368-378
発行日 1973年5月25日
Published Date 1973/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904835
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緒言
大腿骨頸部骨折は老人に多発する外傷性骨折であるが,ある意味ではosteoporosisによる病的骨折と考えられる.このosteoporosisと大腿骨頸部の血行状態および力学的弱点から,骨癒合を完成させるためには解剖学的整復よりは,むしろ力学的に良好な整復位を得て,且つ強固な固定を必要とする骨折である.また,骨癒合が完成してもavascular necrosisの発生する頻度が高いため,骨折治療法の進歩した現在でもなお治療の困難な骨折の1つとされている.この骨折に対する骨接合術の治療成績はその56%に理想的な治療成績を得たという報告(Boyd)もあるが,大部分の治療成績は必ずしも満足しうるものではない.さらに老人は疼痛に対して抵抗が弱く,長期臥床による肺炎,老人性痴呆などの合併症の発生を防止するには,受傷後できる限り早期に疼痛を軽減し,離床と早期運動を開始することが必要である.このような条件を満足し,かつnon-union,avascular necrosisの発生を防止する治療法が見当らない現在,人工骨頭置換術は本骨折に対する最適の治療法という事ができよう.
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