視座
指屈筋腱断裂に対する治療法の変遷に学ぶ
田島 達也
1
1新潟大学医学部整形外科学教室
pp.367
発行日 1973年5月25日
Published Date 1973/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904834
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手の外科におけるハイライトの一つであるno man's land内指屈筋腱断裂に対する治療法は今一つの曲りかどにきている.すなわちS. Bunnellが確立したもつとも輝かしい業績である遊離腱移植術が大きな挑戦を受け直接縫合法の成功が大きくクローズアップされつつある.この興味ある問題の治療法の変遷をまず概観してみよう.
古典的直接縫合のみじめな失敗に挑戦したBunnellは1920年ころからK. Biesalski,L. Mayerらによつて基礎固めされた遊離腱移植術に着目しこれを応用し技術を精密化することによつて画期的な成果を挙げたことは周知のとおりである.しかしこれで問題がすべて解決されたわけではなくJ. Boyesが1950年信頼すべき遠隔成績を発表しているとおり,どんな熟練者によつても優れた成績は70%前後しかえられない.まして神経血管損傷や瘢痕拘縮の合併例などにおける成績は遙かに劣つている.
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