筋組織病理図譜・10
脊髄損傷による麻痺筋
桜井 実
1
,
黒沢 大陸
1
,
柴田 尚一
2
1東北大整形外科
2東北労災病院
pp.853
発行日 1972年10月25日
Published Date 1972/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904755
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脊髄の横断により支配下の随意運動は不可能となるが,前角細胞の2次ニューロンが生きていればしばらく経つてからその反射弓が興奮して痙性麻痺の状態に移行する.しかし前角細胞も障害を受ければその支配領域は弛緩性麻痺のままである.従つて症例ごとにその部位と受傷後の時間によつて筋の病態は極めて複雑である.第1図に示したコハク酸脱水素酵素染色でみられるtarget fiberはいわゆる末梢神経切断でみられるもので(6月号,458頁).この症例は20歳男子の大腿中広筋,胸椎12の脱臼の受傷後約4ヵ月目の標本である.弛緩性麻痺はこの後も継続すると判断される.第2図は29歳の前経骨筋,胸椎12の骨折後8ヵ月目で弛緩性麻痺.大小不同の萎縮は部分的にdystrophyに類似し,さらに第3図に示したコハク酸脱水素酵素染色標本で,筋線維内の破壊,ミトコンドリアの偏在などdystrophyや多発性筋炎でみられる所見と非常に似ている.筋原性,神経原性の分類による萎縮の様相に疑問を提示する症例である.
第4図は筋鞘核の円形化,内部への移動が特徴的である.これは30歳男子,頸椎6〜7の脱臼により全四肢の痙性麻痺と疼痛のため歩行不能となつておよそ2年を経た症例.大殿筋の一部であるが,筋活動が円滑でない状態の標本である.
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