シンポジウム 股関節形成術
私の治療法
"Neoacetabuloplasty"について
飯野 三郎
1
,
日下部 明
1
,
野沢 宏三
1
Saburo IINO
1
1東北大学医学部整形外科学教室
pp.917-927
発行日 1968年11月25日
Published Date 1968/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408903999
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まえがき
このシンポジウムの命題は「股関節形成術」という大きなテーマであるが,本稿においては私たちが数年前から行なつている"Neoacetabuloplasty"と名づけた特殊な方式に話を限りたいと思う.
陳旧性あるいは年長児の先天股脱や,治療不全のまま成長した場合の先天股脱では大腿骨頭が高位に転位し,そこにいわゆる新関節(Nearthrose)を形成し一応の機能を営んでいる場合が少なくない.これらは若年時には関節周囲の軟部組織や筋で関節としての機能代償がよく行なわれており,跛行と易疲労性が目立つくらいで,10歳前後あたりまでは,さのみ疼痛やその他機能的訴述を示さないのが普通である.ことに新潟大の河野教授が主張しているように,これらの放置された先天股脱では,骨頭が多かれ少なかれ骨頭・股臼の引つかかりを有する比較的低度の脱臼よりも,むしろ高度な第3度脱臼で,骨頭が殿筋内にあつて自由に動き,あるいはそこに生じた強靱な結合織性股臼(Surrogatpfanne)で日常生活を営んでいる場合の方が,横ゆれや腰椎前弯の増強などの姿勢・歩行形態の異常が高度であつても疼痛や運動制限は割合に少ないままに一生を過しうることが多い.
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