視座
混迷から整合を,異常から正常を
内田 淳正
1
1三重大学医学部整形外科
pp.1107
発行日 1996年10月25日
Published Date 1996/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408902007
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孔子の生きた時代は,氏族社会の崩壊により封建制度の基礎が崩れていく激動の時である.確かに社会的混迷は著しかったが,その反面,人間を外部から束縛する枠がはずれ,自由なものの考え方を可能にした時代でもあった.後世のヨーロッパで起こったルネッサンスにも比せられる.現代の日本もまた混迷の時代である.今までの社会体制は崩壊しつつあるようにみえる.これが緩徐に進行しているのでその場で生活している人々にとっては激動の時代とは写らないかもしれないが,自らの進むべき指標を自らで作らなければならないのが現在であろう.そんな時,孔子の言葉や生き方を振り返ってみるのも一興かも.
論語第一編 学而に「学而時習之,不亦説乎」とある.学問をすること,実践をとおして学問を身につけていくこと,これは無上の喜びとのことである.「学問が実践の基礎たるものでなければならない」と説くが,これは実用の学を主張したという意味ではなく,目的論の明確な知識や学問が必要であると考えたい.方法論の進歩は著しく,学際的ではあるが,それらを駆使して得られた事実が整形外科の臨床的問題の解決を目指したものであるという目的を忘れてはならない.そのためには,「賢賢易色」(賢者に情熱をもって指導を受ける)「就有道而正焉」(先達に師事して独善から脱却する)「吾日三省吾身」(1日3回反省をする)などと繰り返して独善的になることを厳に戒めている.
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