研究室の片隅で・留学生の見たアメリカ・4
日本語の多義性と英語の整合性
佐伯 千鶴子
,
中西 睦子
pp.494-499
発行日 1985年10月15日
Published Date 1985/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200858
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連続性に重きを置かない
中西 アメリカ人とつき合ってみると,いろいろな面で,日本人同士の関係と,ずい分違うなって思う。たとえば,日本人同士だと,過去に何らかの好意の負債がある時,"先日はいろいろお世話になりました"とか"ごちそうさまでした"とか言って"さて‥‥"と今日の関係が始まる。そこにその相手との関係の連続性みたいなものがあるでしょう。だから,関係の進み方が,過去の関係の上に立って,今日の関係があるという,そういう積み重ねがあると思うのね。「こないだはありがとう」って言いたい気持ちが,私の中にあっても,こちらでは,なかなかうまい表現が見つからない。"Thank you"っていうのは現在の表現だから,どうもしっくりこない。パッパッと切って,過去は過去,現在は現在で,そこに連続性がなくても構わない,みたいなところが,こちらにはある。
佐伯 そうかもしれませんね。たとえばけんかをしていても,過去は過去として整理していけるのね。こちらはわだかまっていても,相手はわだかまっていないんですものね。
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