海外の医療
北欧の医療の現況—混迷する福祉社会
伊東 敬文
1
1コペンハーゲン大学社会医学研究所
pp.800-805
発行日 1981年9月1日
Published Date 1981/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207570
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北欧諸国は,人口の面ではいずれも小国である.スウェーデン828万,デンマーク510万,フィンランド480万,ノルウェー410万,アイスランドはわずか23万に過ぎない(いずれも,1978年の数字).最大のスウェーデンでさえも,東京よりはるかに少ないのである.小国とはいえ地理的には各国ともかなり広く,1km2当たりの人口密度で見ると,デンマークでは,日本の約3分の1(日本は,306人),他の北欧諸国では,ほぼ20分の1以下である.生活水準では,スウェーデンを筆頭に,世界の最高水準を保っている.これらの諸国の医療制度を日本との比較で考える場合,余程の注意が必要である.それぞれの国は確かに独立した一国であり,それぞれ独自の行政制度を持っているとは言え,日本との比較で考える場合は,むしろ一地方ぐらいな感じで比較したほうがより現実的ではないかと思う.北欧諸国でできた医療制度の改革を,日本の国政のレベルで直接比較するのはあまりに乱暴なように思われるからである.
また北欧と一口で言っても,各国の医療制度の事情は,それぞれの地理的,あるいは政治・経済の歴史的発展過程により微妙に異なっており,一括してしまうことはできない1).ここでは,筆者が最も精通しているデンマークの最近の動向を中心に紹介してみたい.
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