視座
生体関節のbiomechanicsに学ぶこと
岡 正典
1
1京都大学生体医療工学研究センター・運動器系人工臓器学領域
pp.653
発行日 1993年6月25日
Published Date 1993/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408901127
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生体関節では衝撃荷重は柔らげられ均等に分散して骨に伝達される.また,関節軟骨の摩擦係数は,0.003と著しい低摩擦で70年の酷使にも耐えて摩耗しない.一方,目覚ましい臨床的成功をおさめた人工関節には,looseningをはじめとする合併症により再手術を要する例が年々増加しつつあることは否めない.特にポリエチレン(PE)の摩耗粉の惹起する異物肉芽組織による骨破壊が大きな問題となっている現在,生体関節の優れた機能を生力学的に解明し,得られた知見に基づいて理想的な人工関節を開発する必要があると思われる.
生体関節の驚くべき低摩擦は関節面相互の接触が極めて少ない液体潤滑を考慮しないと説明が困難である.私達はガラス板と関節軟骨面との間に荷重下に形成される隙間をレーザー変位計により測定し,同時に液圧の経時的変化を測定することにより,生体関節では軟骨面は部分的に接触するが軟骨内液体の流出(weeping)により,また軟骨のクリープ変形により液体が閉じこめ状態となってプールされ液体膜の厚みと液圧が維持される混合潤滑が成立することを確かめた.
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