一頁講座 関節・5
関節の生体力学(潤滑)
宮永 豊
1
1東大整形外科
キーワード:
関節
,
生体力学
Keyword:
関節
,
生体力学
pp.381
発行日 1978年5月10日
Published Date 1978/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103988
- 有料閲覧
- 文献概要
関節運動の際には運動に拮抗するような摩擦抵抗が生ずる,摩擦抵抗は荷重Pの物体をすべり運動させるに要する摩擦力Fのことを指し,μ=F/Pを摩擦係数と呼ぶ.μが小さいほど摩擦は小さく,大きいほど運動させるに要する力が大きくなる.μは二面間の速度,荷重,物質等の状態により異なる.関節の摩擦係数は0.0057から0.02と驚くほど小さく,これは氷上をスケートで滑っている時(0.03)の約3倍,ブラスチック同士を運動させた時(0.1~0.3)の少なくとも10倍はすべリ易いことになる.このように関節の潤滑性はきわめてすぐれているとはいえ,工業機械の輌受と同様に摩擦を生じ摩耗する(wear & tear).したがって関節の変性,老化だけでなく摩擦,摩耗やゆるみなどの問題を生じ得る人工関節の材質やデザイソの決定などに有力な情報を与える関節の潤滑機構の解明は重要な問題である.残念ながら未だ決着をみていないが,各種潤滑様式を解説する.
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.