整形外科/知ってるつもり
軟部肉腫に対するUnplanned Excision(無計画切除)の実態
丹澤 義一
1,2
,
小林 英介
2
,
川井 章
2
,
渡辺 雅彦
1
Yoshikazu TANZAWA
1,2
,
Eisuke KOBAYASHI
2
,
Akira KAWAI
2
,
Masahiko WATANABE
1
1東海大学医学部外科学系整形外科学
2国立がん研究センター中央病院骨軟部腫瘍・リハビリテーション科
pp.712-718
発行日 2019年7月25日
Published Date 2019/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201419
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はじめに
日常診療の場で遭遇する軟部腫瘍の多くは四肢・体幹の比較的表層に局在し,疼痛などの症状も乏しく,その大半は良性腫瘍である.しかし,中には悪性腫瘍も存在し,2002年の米国の統計では全軟部腫瘍の約1%を占めるとされている1,2).悪性軟部腫瘍(以下,軟部肉腫)は,軟部組織から発生する悪性腫瘍の総称で,全身のあらゆる部位に発生しうる.また非常に稀であることから局所麻酔下に切除後病理診断で初めて悪性と診断され専門施設へ紹介されるケースが少なからず存在する.軟部肉腫の治療は,まずMRIなど,画像診断を行い,腫瘍の性状と進展範囲を把握したうえで,適切なアプローチで生検を行い,病理組織診断に基づいて手術(広範切除術)を行うことが原則である.
無計画切除(unplanned excision:UE)とは,軟部肉腫に対して十分に術前の鑑別診断・画像評価が行われず,診断が曖昧なまま切除されることをいう.UEが施行された場合,腫瘍の残存する可能性が高く,局所再発を生じるリスクが高いため,速やかに専門医による追加広範切除が必要となる.またUE時の不適切な皮切により,通常よりマージンを広くとる必要があり,追加広範切除時の組織欠損がより広範囲となることが問題となる.整形外科医においては,日本整形外科学会による骨・軟部腫瘍特別研修会の履修が必須のため,軟部肉腫に対する認知度は高く,不適切な手術は減ってきていると思われる.しかし,われわれの施設に紹介されるUE患者は決して減っているとはいえない状況である.
本稿では私が経験した症例を提示しながら,軟部肉腫に対するUE症例の診療実態とその問題点について述べたいと思う.
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