胃癌手術のロジック―発生・解剖・そして郭清・8
系統的胃間膜切除systematic mesogastric excision
篠原 尚
1
,
春田 周宇介
1
1虎の門病院消化器外科
pp.696-703
発行日 2013年6月20日
Published Date 2013/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407104611
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56 正統な網囊切除には確かに大網全切除という大義はあるが,いざ実施するとなると,出血や膵液漏などのリスクがある程度つきまとう.進行度に斟酌を加えずすべての胃癌手術で実施するというわけにはいかない.それなら郭清度を(リンパ節の番号ではなく)腸間膜の切除範囲で規定する結腸癌手術の考え方を,言うなれば系統的胃間膜切除systematic mesogastric excisionとして,胃癌リンパ郭清のコンセプトに取り入れてみよう.
まず横行結腸付着部で[大網]と[横行結腸間膜前葉]の間を切離する(①).ここに最初の“脂肪が剝き出しになってしまう部分”ができる.網囊内に入った後,膵下縁で今度は[横行結腸間膜前葉]と[網囊後壁]の間を切離する(②).2か所目の“脂肪が剝き出しになってしまう部分”ができる.当然,後大網動脈を切離することになる.中間脂肪層を通過すると,目の前にさっと剝離可能層が開ける.この層は通常above Toldtのouter dissectable layerである(右頁図57写真a).この剝離層を脾外側から迎えに行けば尾側膵・脾の固定解除,いわゆる膵脾脱転ができる(図58a).
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