最新基礎科学/知っておきたい
人工神経の適応と限界
多田 薫
1
,
山本 大樹
1
,
中嶋 宰大
1
,
中田 美香
1
,
松田 匡司
1
,
土屋 弘行
1
Kaoru TADA
1
,
Daiki YAMAMOTO
1
,
Tadahiro NAKAJIMA
1
,
Mika NAKADA
1
,
Masashi MATSUTA
1
,
Hiroyuki TSUCHIYA
1
1金沢大学整形外科
pp.720-723
発行日 2019年7月25日
Published Date 2019/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201420
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
人工神経とは
1970年代のMillesiら1)の報告以降,末梢神経の欠損に対する治療として,健常部から採取した自家神経を移植する自家神経移植術がgold standardと考えられている.しかし,自家神経移植術には再建できる神経のサイズに限界があることや,健常な神経を移植片として採取するために知覚障害や疼痛が遺残することが問題視された.そこで,自家神経に代わる移植片として研究されるようになったのが「人工神経」である.
人工神経とは末梢神経の再生を保護,誘導する作用を持つ末梢神経の欠損に対するインプラントであり,英文ではnerve conduitやartificial nerve graftなどと表記される.整形外科領域で広く使われる金属製の各種インプラントとは異なり,再生組織が必要とする新生血管や酸素,栄養分に対する透過性や,周辺組織や再生組織に対する親和性や柔軟性,そして適切な時期に吸収,分解される生体吸収性を有する.また,人工神経は神経の欠損部を補完するものではなく,欠損部の自然回復を補助するものである点が特徴的である.
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.