誌上シンポジウム 骨軟部腫瘍の薬物治療アップデート
緒言
吉川 秀樹
1
Hideki YOSHIKAWA
1
1大阪大学
pp.658
発行日 2019年7月25日
Published Date 2019/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201407
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骨軟部腫瘍の治療は,外科的治療,化学療法,放射線治療(重粒子線を含む)などを駆使した集学的治療が行われている.薬物治療に関しては,1980年代から,骨肉腫,Ewing肉腫,横紋筋肉腫などの悪性腫瘍に対し,種々の化学療法が開発され,術前,術後の系統的化学療法(neoadjuvant chemotherapy)の概念が確立され,飛躍的な予後改善が示された.さらに近年,骨修飾薬,新規抗がん剤,分子標的治療薬などが次々と開発され,骨軟部腫瘍の薬物治療への適応も増え,治療の選択肢が広がっている.
骨代謝研究の成果により,転移性骨腫瘍に対するビスホスホネート製剤や,抗RANKL抗体(デノスマブ)などの破骨細胞をターゲットとした骨修飾薬による治療が開発されてきた.これらは,高カルシウム血症の是正や,溶骨性病変の進展阻害に有効であることが示されてきた.さらに,骨巨細胞腫に対するデノスマブ治療の有効性が示され,主として骨盤,脊椎などの切除不能例に使用され,著効例も報告されてきた.軟部肉腫に対しては,長年,新薬の開発はなされなかったが,2012年以降,新たな抗がん剤や分子標的治療薬が保険適応となり,軟部肉腫に対する二次治療として,新たな展開が期待されている.一方,デスモイドに対しては,広範切除術が基本であるが,手術後の再発率は高く,従来,消炎鎮痛薬,抗エストロゲン療法,メトトレキサートなどの薬物療法が試みられてきた.近年,種々の分子標的治療薬や瘢痕治療薬など新しい治療法による有効例が報告されてきた.
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