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骨組織は,骨折の治癒現象に代表されるように,本来豊かな再生能力を有している.しかし,骨腫瘍の切除後や,重度の粉砕骨折などで生じた大きな骨欠損に対しては,自家骨では対応できず,人工骨を用いた骨組織の修復,再生が必要となる.また骨粗鬆症により脆弱化した骨の補強や,高齢者の骨折治癒の促進は,QOLを高めるのみならず,患者の社会復帰を促し,医療費や介護費の削減を導く.骨は力学的強度を必要とする組織であり,その再生には,まず骨形成細胞の足場としての良好な人工骨の開発が必要である.近年まで,アルミナ,ジルコニア,バイオグラス,ハイドロキシアパタイト,β-リン酸三カルシウム(β-TCP)など様々な素材が人工骨として使用されてきた.なかでも,ハイドロキシアパタイトは哺乳類の骨・歯の無機成分に類似しており,その生体親和性,骨伝導能からも人工骨として適している.したがって,1980年代から整形外科,歯科口腔外科領域において骨補てん剤としてハイドロキシアパタイト人工骨が使用され始めた.しかし当初のハイドロキシアパタイトは内部に有効な連通気孔構造を持たないため,内部に十分な骨新生が起こらなかった.細胞が十分通りうる大きさの気孔間連通孔と適度の初期強度を有する人工骨が理想とされ,近年,気孔間連通孔構造を有する新世代人工骨が開発された.一方,骨伝導能に優れ,骨への置換が比較的早いβ-TCPも,広く臨床使用されてきた.研究面では,これらの人工骨をスキャフォールドとして,骨髄幹細胞やBMP(骨形成蛋白)などの併用,血管の導入などにより骨再生をさらに促進させる試みがなされている.近い将来,これらハイブリッド人工骨を用いた骨の再生医療が可能になることが期待されている.本稿では,整形外科における人工骨移植の現状と将来展望について理解を深めるため,各領域でご活躍の先生方に執筆していただいた.最初に,占部先生には整形外科における骨移植全般の現状と動向について紹介していただいた.次に,香月先生,生越先生,橋本先生,松崎先生には,各々の専門領域別に人工骨による治療の実際を紹介していただいた.最後に,寿先生には,人工骨を用いた骨再生医療の現状と課題について解説していただいた.いずれも,人工骨に関する最新の知見を多く盛り込んだ内容になっており,整形外科医にとって多くの有益な情報を提供するものと信じている.
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