誌上シンポジウム 人工骨移植の現状と展望
緒言
吉川 秀樹
1
1大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学講座(整形外科学)
pp.934
発行日 2015年10月25日
Published Date 2015/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408200343
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1980年代から,整形外科,歯科口腔外科領域における骨補塡剤としてハイドロキシアパタイト人工骨が使用され始めた.当初のハイドロキシアパタイト(HA)は,内部に有効な連通気孔構造を持たないため,内部に十分な骨新生が起こらなかった.骨形成細胞や血管が十分通過できる大きさの連通孔と適度の初期強度を有する人工骨が理想とされ,2003年,気孔間連通孔構造を有するHA人工骨が開発された.その後,骨伝導能に優れ,骨への置換が比較的早いβ-リン酸3カルシウム(β-TCP)が開発され,広く臨床使用されてきた.さらに,ミクロポアを有する3重構造人工骨(HA,β-TCP),配向性を有するHA人工骨,緻密体と多孔体の複合体HA人工骨,HAとcollagenの複合体人工骨など,次々に新規人工骨の開発,臨床応用がなされてきた.現在では人工骨移植は,その低侵襲性,優れた組織適合性や骨伝導性,簡便性などから,種々の整形外科手術において,自家骨移植に置き換わりつつある.
本誌上シンポジウムでは,各種人工骨の長所と短所を知ること,整形外科の臨床の場で適正な使用を行うことを目的として,その開発や臨床応用に直接携わった先生方に執筆いただいた.
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