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あとがき
松本 守雄
pp.494
発行日 2016年5月25日
Published Date 2016/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408200544
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今年は平年より早く,都内で桜の開花宣言が出されました.毎年,3月中旬を過ぎますと日本中がこの話題で盛り上がります.寒い冬が終わり,暖かい春を迎えて美しい桜の花を愛でますと,心も高揚します.「世の中に たえて桜のなかりせば 春の心は のどけからまし(世の中に桜の花がなければ春はどれだけのどかな気分になれるのだろう)」と詠んだ平安時代初期の歌人,在原業平の心境がよく理解できます.一方で業平は「桜花 散り交(か)ひ曇(くも)れ 老いらくの 来(く)むといふなる 道まがふがに(桜の花よ,散り乱れてあたりを曇らせてくれ.老いがやってくる道が分からなくなるように)」とも詠んでいます.これは40歳を迎えた時の権力者,右大臣藤原基経に対するお祝いの歌として詠まれたそうです.諸説では平安時代の平均寿命は40歳に満たなかったということなので,40歳というと十分にお祝いに値する年で,同時に老いを心配する年でもあったのだと思われます.ところが現在では,医学の発達,栄養状態,生活環境の改善から平均寿命はその当時の倍以上に伸びており,高齢者が増加し,40歳というとこれから働き盛りというところです.
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