視座
医療専門家が医療政策に提案を
秋山 典彦
1
1川崎協同病院
pp.1069
発行日 2007年11月25日
Published Date 2007/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408101160
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戦後,日本の医療は壊滅的状況にあったが,復興のための他の産業への資金投資が優先され医学,医療の発展は経済的に乏しい中で世界のレベルに追いつくことが要求された.医療の需要に供給は大幅に不足し,医師の過重労働は必要悪として存在し,安全性や患者本位性は後回しとなった.医師は,医療の最前線で仕事ができる「誇り」と治療の成果を患者と共有できる「喜び」を生きがいとし,過酷な労働に耐えてきた.日本の経済が右肩上がりの時代は,診療報酬点数もわずかずつ増加し,将来に希望を託してきた.
1980年以降,医療費抑制政策が進められ医療施設間競争が激化し,医師の労働環境は増悪した.施設間競争の激化は採算性重視となり医師の「誇り」を侵し,医療の安全性・患者本位性に対する対応の遅れと患者負担の増加は国民の医療に対する不信をもたらし,治療の成果を共有する「喜び」を喪失させてきた.国は歴史的に未分化で在院日数の長い日本の病院を長期間放置してきたが,医療費抑制策のなかで政策の転換を短期間に強引に推し進めている.このために病院の倒産が急激に増加し,医療施設間競争はさらに激化し採算性重視の医療となり,医師の倫理をゆがめ始めている.
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